アブストラクト[]
OECD諸国の多くで所得と賃金の格差が急速に大きくなっている.本レポートでは,賃金・所得の格差の決定要因に関する研究をサーベイし,政策分析のフレームワークを提示する.焦点をおくのは人的資本政策だが,所得格差を減少させるこれ以外の政策も考察する.
本レポートの結論は,OECD諸国で拡大した所得格差はより大きな賃金格差とより高度な技能プレミアムを反映したものであるということ,そして,技能プレミアムを上昇させた原因としてもっとも蓋然性の高いのは技能と教育への需要を増大させた技術変化であるということ,この2点である.ただし,たとえば最低賃金を定める法や労働組合による交渉の重要性といった労働市場制度の変化もまたなんらかの役割を果たしているらしい.たしかに技能の供給には有益な効果があるものの,格差を縮めるもっとも有効な政策は,賃金分配の頂点と底辺の間に横たわる技能のギャップをせばめることであろう.たとえば中等教育の質を改善したり,オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)を振興するといったことがこれにあたる.
『人的資本政策と所得分配』もくじ
- Part 1: 全体の要約 【FINISHED】
- Part 2: イントロダクション 【FINISHED】
- 2.1 目的 【finished】
- 2.2 アウトライン 【finished】
- Part 3: シンプル・フレームワーク 【FINISHED】
- 3.1 所得不平等の要素 【finished】
- 3.2 賃金不平等の決定要因 【finished】
- 3.3 アプリケーション:スキルの相対供給のスキルプレミアムに及ぼす影響と移民の持つ意味 【finished】
- 3.4 技術と賃金不平等 【finished】
- 3.5 注意:スキルの相対供給と技術の間の関係 【finished】
- 3.6 国際貿易と不平等 【finished】
- 3.7 グループ内の不平等 【finished】
- 3.8 結論 【finished】
- Part 4: 不平等のその他の重要な決定要素
- 4.1 シグナルと選別としての教育 【finished】
- 4.2 Rent-Sharing in the Labor Market 【finished】
- 4.3 Good Jobs Versus Bad Jobs 【finished】
- 4.4 Concluding Comments 【finished】
- Part 5: 人的資本に投資するインセンティブ
- 5.1 教育の便益 【finished】
- 5.2 教育のコスト 【finished】
- 5.3 教育決定における市場の失敗【finished】
- 5.4 競争的な労働市場での訓練【finished】
- 5.5 非競争的な労働市場での訓練【finished】
- 5.6 訓練での市場の失敗?【finished】
- 5.7 結論 【finished】
- Part 6: 不平等を縮小する政策【finished】
- 6.1 賃金圧縮 【finished】
- 6.2 課税による再分配 【finished】
- 6.3 人的資本政策
- 6.3.1 高等教育助成の効果 【finished】
- 6.3.2 収入調査に基づく高等教育助成 【finished】
- 6.3.3 特に専攻分野を選別した学費免除と支援 【finished】
- 6.3.4 教育ローンを利用しやすくする 【finished】
- 6.3.5 中高校に向けた政策【finished】
- 6.3.6 バウチャー【finished】
- 6.3.7 オンザジョブトレーニングを推進する政策 【finished】
- 6.3.8 「まず働け」政策【finished】
- 6.3.9 就学前教育に向けた政策【finished】
- 6.4 結論【finished】
参照文献
クレジット
この翻訳の参加者は下記のとおりです(五十音順,敬称略):
・稲葉振一郎 ・okemos ・optical_frog ・平家 ・ラスカル ・山形浩生 ・WASSHOI