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『人的資本政策と所得分配』:section5.7

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5.7 結論 Concluding Comments編集

このパートでは,教育・訓練に投資するインセンティブの主要な決定要因を検討した.〔教育と訓練の〕いずれの場合にも,誰が人的資本に投資しどれくらいの投資がなされるかを理解するにはこうした投資の費用と便益が欠かせない.教育への投資と訓練への投資の違いを私は強調しておいた.また,労働市場に不完全性があることで訓練に投資するインセンティブがどう変化しうるかも重要だ.


 以下の論点を繰り返しておくと有益かもしれない:


  1. 教育に関する意志決定は教育へのリターンと教育の費用により影響を受ける.リターンが大きくなるほど教育投資のインセンティブは強まる.実際問題としては,この効果は相対的に小さいように思われる.スキルの供給が相対的に増加しても不平等にはゆっくりとした影響しかでてこないという前述の結論と考え合わせると,このことからは,近い将来に不平等の拡大が自動修正する余地はほとんどないことが示唆される.
  2. 教育の費用は教育に関する意志決定にも関係している.こうした費用の内訳は,学費,放棄所得と非金銭的な費用から成り立っていて,家庭やピアグループによって決定される.個々人や家族による計算にこうした金銭的な費用がどう算入されるかは,金融市場の問題に左右される.金融市場の不完全性が存在している場合には,個々人は借金をして自分たちの消費を円滑にすることができず,教育の費用はより高く受け取られることになる.
  3. 労働市場が完全に競争的なときには,訓練に関する意志決定も同様の要因によって影響される.リターンが大きく,しかもたとえば放棄所得や消費の円滑化の点で費用が小さいとき個々人はより多く投資する.
  4. しかしながら,訓練への投資が労働者と企業の共同でなされていることで,この分析はもっと込み入った者となる.たとえば,企業と労働者の間に契約に関する問題があり,そのため企業が生産を上げるために労働者の訓練時間を最小化することのないようコミットできないときには,訓練への投資は深刻なまでに切り詰められる.
  5. 労働市場が不完全に競争的なときには,企業がその被雇用者の訓練に投資するインセンティブはより大きなものとなる.この場合,問題となるのは企業へのリターンであって労働者へのリターンではない.賃金構造がより圧縮されると,訓練を受けた/スキルのある労働者はみずからのスキルよりも相対的に少ない報酬を得ることになる.このように圧縮された賃金構造は訓練へのさらなる投資を促すかもしれない.というのも,この場合には被雇用者の生産性が上昇することから企業が得るリターンが大きくなるからだ.
  6. 教育でも訓練でも,多くのタイプの市場の失敗が存在する.もっとも重要なのは,金融市場の問題によってどちらのタイプの投資においても投資不足が生じることだ.こうした金融市場の問題は現に現れていることが証拠から示唆される.また,投資不足にはこれ以外の理由もありうる.たとえば,シグナリングや人的資本の外部性といった理由だ.しかし,こうした問題の大きさはより限定されているようだ.


 こうした知見を得たうえで,次は政策の議論に移ることにしよう.


『人的資本政策と所得分配』:Part6

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