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3.5 注意:スキルの相対供給と技術の間の関係編集

これまでの考察では技術を外生的なものとして取り扱ってきたが、最近の内生的成長論の文献は技術の内生性を強く強調している。アセモグル(1998,1999)において、私は技術のスキル偏向性もまた内生的であって、スキルのある労働者の豊富さに依存していると主張した。

アセモグル(1998)の要点は、スキル偏向型技術がより利益を生むなら、企業はそのような技術を開発し導入するより大きな誘引を持つ、というものだ。新しい技術の利益の鍵となる決定要因はその市場サイズである;より多く売ることのできる機械はより大きな利益を生む。Schmookler(1966)は、彼のパイオニア的な研究Invention and Economic Growth において、市場サイズを大きく強調した。彼は「発明は多分に、ほかの経済的活動同様の利益を求める経済活動である;...予想される利益はその発明を組み込んだ財の予想売り上げとともに変動する」と主張した(p.206)。よって、この考えによると、スキルありの労働者を補完する機械は、その機械を使うスキルあり労働者達が多いほどその開発の利益が大きくなる。その結果、スキルの供給の大きな増加は図1の中で示されているように相対需要曲線に沿って経済を動かすだけでなく、技術についてのその効果を通してこの相対需要曲線を右へとシフトさせたりもするだろう。

アセモグル(1998)の中心となる主張は新しい技術の開発に関連したものだが、ニュージーランドはアメリカやヨーロッパで開発された技術を主に使っているので、その主張のニュージーランドにとっての重要性は限定的だと思われるかもしれない。けれども、同じ主張は技術の開発だけでなく、その採用についての決定にも適用できるのだ。もしニュージーランドの労働市場や消費者需要への既存技術の採用の費用が高いならば、企業はより利益の大きい技術から採用しようとするだろう。同様の推論から、市場サイズのより大きい、つまりより多くの労働者によって使われる技術こそが利益のより大きいものとなる。この為に、より教育を受けてスキルを持った労働者の供給の増加は、よりスキル偏向型の技術を採用する事、および売り込む事の利益を高め、新しい技術のスキル偏向の程度を高めるのだ。

アセモグル(1999)の主張も関連したものである。その論文においては、スキルの供給の増加の結果として変化するのは技術のフロンティアではなく、企業による既存の技術の使い方だ。具体的には、スキルありの労働者が多い場合、企業にとって高いスキルを必要とする仕事に投資して、そういった仕事に向いた労働者を探すことの利益が高まるようになる。逆に、スキルありの労働者が少ない場合、企業はスキルあり、スキルなし、双方の労働者のどちらでもこなせるような仕事をつくりだすようになるだろう。つまり、スキルの供給の増加は経済を、スキルあり・なし双方の労働者に高賃金の仕事があるような「プーリング均衡」から、スキルのある労働者だけが質の高い仕事に就けるような「分離均衡」へと移動させてしまうかもしれないのだ。(良い仕事 vs. 悪い仕事といった)仕事の構成の質がいかに所得の分布に影響を及ぼすかについて考察するため、このレポートの次のパートにおいて私はこのトピックに立ち戻る。


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図3:限定的な内生的スキル偏向型技術変化が起る場合の、スキルの供給増加へのスキルあり労働者への相対賃金の変化


今のところの結論は、仕事の技術や組織が内生的である場合、経済はスキルについての右下がりの相対需要曲線に単純にそった動きをしないというものだ。図3 はそういったケースを図にあらわしている。技術の変化によって相対需要曲線は右にシフトし、その結果、スキルプレミアムへのスキルの相対供給の増加の効果は限定的なものになる。本質的に、スキルの供給の変化が、少なくとも部分的には、それ自身への需要を作り出しているのだ:スキルありの労働者が多いならば、企業はいつかはより多くのスキルあり労働者を需要するようになる。その結果として、スキルプレミアムへのスキルの相対供給の増加の効果は一部相殺されるわけだ。この事についての考察は、単純にスキルの供給の変化を通してスキルプレミアムに影響を与えることで不平等と戦おうとする政策への注意を喚起してするものである。


『人的資本政策と所得分配』:section3.6

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